これが長期投資の王道だ
澤上篤人 著
個人的に考えが違うところもあるが、多くの面で共感できた
銭ゲバ連呼しすぎ
ファンドマネジャーにありがちな自分とこのファンド紹介がなくて好感
おすすめ度 ☆☆☆☆
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みなさんご存知さわかみファンド
本屋に行ったらこんな本が出ていたので買ってみました。
著者の澤上篤人氏は投資をかじったことがある人なら名前くらいは知っていると思いますが、さわかみファンドを運用しているさわかみ投信の創設者です。
さわかみファンドといえば目先の利益にとらわれない長期投資という印象ですが、その運用哲学は詳しくは知りませんでした。ですがこの本によってその株式投資に対する思いの片鱗を感じることができました。
その内容は本を買って読んでもらうとして、面白かったのがとにかく投機家や短期の投資家を「銭ゲバ」とこき下ろしているところです。わたしも常々小さな値幅でりざやを稼ぐような投資家にあまり良い印象を持っていなかったのですが、それを澤上氏は「銭ゲバ」とバッサリやってるところは流石だと思いました。
しかも1回だけでなく何回も「銭ゲバ」「銭ゲバ」「銭ゲバ」と連呼しています。よっぽど近視眼的な取引が嫌いなんでしょう。
あと気付いたのは澤上氏の執筆スタイルは「大事なことなので2回書きました」ということです。「あれ?これさっき読んだ文章と同じことが書いてある」と思うこともありましたが、たぶん意図的にやっているのでしょう。大事なことをを繰り返し繰り返し書くことで、読者に「これは大事なことだな」と気付かせるようにしているのでしょう。
これは初心者にも読みやすい配慮だと思いました。
後半になるにつれて熱量が上がっていく
最初の方は初心者にやさしく説くように書かれているのですが、後半になるとだんだんと文章がヒートアップしているという印象を受けました。
とくに生活者個人個人が日本企業のオーナーになるという大きなビジョンを説明するときは、まるで目の前で熱くなった澤上氏が語っているかのように感じました。おそらくここら後半の部分が澤上氏がいつも考え、そして実現させたい部分なのでしょう。わたしも日本の個人が日本企業の大株主になるというのは常に願っていることなので、大いに共感しました。
ただところどころ考え方が違うところや、ミクロ経済とマクロ経済の考え方がわたしとの違いがあったりしました。売買のサイクルなどはわたしの投資手法とは違う考え方でした。もちろん同じ長期投資家だとしても細かいところで考え方の違いはありますので、これは当然だとおもいます。
ファンドのことには触れず
他にわたしがいいなと思ったところは、さわかみファンドの運用側なのにファンドのことについてのセールスみたいのものが出てこなかったことです。
誰とは言いませんが他のファンド運用者の著書などを読むと、ファンドの運用方針や哲学もほどほどに自分のファンドのセールスをするものもありました。そのときは、「なんだ結局自分のファンドを売り込むための本かよ」とがっかりしました。
ですが澤上氏のこの本はそういうことはなく、むしろファンドのことには全く触れません。ブックカバーの帯には「年利5%を18年続けた云々・・・」と書かれていますが、帯の煽り文句は出版社の仕事なので澤上氏はノータッチだと思われます。つまり宣伝目的ではなく、純粋に長期投資について書かれた本ということです。
そういうところに、長期投資家としてのこだわりと強い信念を感じました。
文字も大きめで読みやすく内容は投資初心者にもわかりやすいので、長期投資について詳しく知りたいという人は読んでおいて損はない本です。