【書評】戦争にチャンスを与えよ

戦争にチャンスを与えよ

エドワード・ルトワック 著
奥山真司 訳

今現在日本の周辺の情勢を戦略という観点から書かれている
加えて戦略的なエッセンスが随所に含まれていて大変参考になる
しかも安い
とにかく安い

おすすめ度 ☆☆☆☆☆

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なかなか過激なタイトル

ご覧のとおり、なかなかエッジの聞いた過激なタイトルです。

戦争に嫌悪感を抱く普通の人ならば、本屋で眉を歪めてスルーしてしまうくらいでしょう。しかし内容はいたって真面目であり、今現在日本を取り巻く東アジア情勢を中心に戦争の役目、介入の功罪、戦略の矛盾性、北の独裁者の髪型などについて書かれています。

戦略的な内容の本というのは概ね小難しくなってしまうのですが、本書は訳者である奥山真司氏によるエドワード・ルトワック氏へのインタビュー内容をわかりやすく噛み砕いて書かれているため、大変読みやすいです。しかもこのルトワック氏は肘鉄で人を○したとか、誰かの髪型は酷いとか、むかしはワルだったとか、結構武闘派でおもしろいおっさんです。

それでいて戦争や難民問題に対しては、非常にリアリストな目線で問題の本質を鋭く考察しています。タイトルでもある2章の「戦争にチャンスを与えよ」とは彼が昔書いた論文です。戦争は平和をもたらすという役割があり、無責任な介入をすると無駄に戦争を長引かせてしまいます。このため、生半可な気持ちで大国が小国の紛争に介入してはいけません。

また、難民への援助が逆に難民を永続的に縛り付けてしまうということも論じています。これを読むとたしかにそうかもしれない、と納得してしまうものがあります。

パラドキシカル・ロジック

この本で面白かったのは6章の紛争時に働く「パラドキシカル・ロジック(逆説的論理)」という考え方です。相手がいないときは最善の方法で最短距離を行くほうが最も早く物事を成し遂げられるが、相手がいると裏をかき回り道して行ったほうが最善となるという論理です。(あってる?)日本にも「急がば廻れ」という言葉もありますね。

戦略においては常にバカ正直に物事を行うのではなく、常に相手の行動を考えて裏を取るようにしなければいけません。前回と同じ方法は相手には通じなくなっているのです。聖闘士には同じ技は通用しないことはもはや常識!と同じですね。

この本でエドワード・ルトワック氏が安倍首相と会談したとの旨が書いてあります。おそらく中国に対する戦略などを話し合ったのでしょう。もちろんこの本が出版された直後に中国の軍関係者は翻訳し、研究していると思われます。

しかしパラドキシカル・ロジックの論理からすると、すでにこの本で書かれている中国に関する対策などは陳腐化というか囮みたいになっていて、その裏を書く戦略が構築されているのは想像に固くありません。実際にエドワード・ルトワック氏の前著である中国4.0からみて、本書では中国に対する対策の意見は変更されています。そう考えれば、同じように本書の対策はすでに中国の裏をかくように次のステージに移っているとみるのは当然です。

また、戦略において大国は小国と戦争をする場合、大国は小国に勝つことはできないなんていうのも書かれています。これをみたら「ん?どゆこと?」と思うでしょうが、本書を読んでみればいまの安倍首相の外遊も、なるほどなーとうなずくと思います。

良い本なのでとりあえず読んでみたら?

何度も書きますが、本書は現在の日本を取り巻く東アジア情勢を戦略という視点から書かれています。インタビューの日付を見ると去年の10月に行われたようですが、いまこそ知っておきたい内容であり全く古びてなどいません。また各所に戦略の本質が散りばめられており、繰り返し読むことで抽象的な戦略の輪郭がうっすらと見えてきます。

戦争と聞いただけでアレルギーを起こして何も考えない人もいると思いますが、平和を求めるのならばこそ戦争について考えて置かなければいけません。たしかに戦争で命を失うことや都市や街や家を破壊しすることは、まぎれもなく悪です。だだ戦争とは望む望まないにしても起こってしまう可能性は常にあり、もし起こってしまえば速やかに対処し終わらせることが平和への回復を早めます。

そのためには政府に任せきりにせずにわたしたち個々人が戦略という視点を持ち、世界情勢をみていくことが必要なのではないでしょうか。本書はその入口として大変読みやすく、読めば読むほど戦略的な視点を養うことができる良書です。もちろん戦略的な視点は投資にも役立ちますよ。

そしてなによりこの内容で定価が800円(税抜き)と安いのもいいですね。まさに圧倒的コストパフォーマンスです。

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